重ね継手って何ですか?
2本の鉄筋を重ねて結束線で結ぶ継手の方法です
そんな簡単な方法なんですね!
施工上は簡単ですが継手の長さ(ラップ長)や配置に決まりがあります
- 重ね継手って何ですか?
- 重ね継手が必要な理由って何ですか?
- 重ね継手に必要な長さってどうやって決まってますか?
こんな悩みを解決します。
重ね継手が必要な理由
重ね継手に必要な長さ
重ね継手の位置
この記事では、コンクリート構造物では必要不可欠な鉄筋の重ね継手について理解できます。
これを読み終えれば、鉄筋の重ね継手の基本的な考え方が理解できます。
執筆者
1級土木施工管理技士の元ゼネコンマンが重ね継手について解説します。
なお、鉄筋の継手全般については[3分で分かる鉄筋の継手!一級土木施工管理技士が徹底解説!]で詳しく解説しています。
鉄筋の重ね継手とは?なぜ必要?
鉄筋の重ね継手って何か決まりがありますか?
鉄筋の継手の位置と必要な長さが決まっています
2本の鉄筋を一定の長さ重ねて結束線で結び、1本の鉄筋と同等以上の性能を発揮させる継手方法です。
コンクリートと鉄筋の付着により一方の鉄筋に作用する力を、もう一方の鉄筋に伝達します。
そのため、重ね継手は鉄筋同士を重ね合わせる長さが大切です。
施工上の注意点を解説する前に、まずは重ね継手が必要な理由を解説します
基本的には、設計図書で謳われている数値以上の長さを重ねていれば問題ないです。
鉄筋の重ね継手が必要な理由
鉄筋はJISで定められている工業製品で、正式には「鉄筋コンクリート用棒鋼」という名称です。
その中で、作成可能な鉄筋の最大長さ(12m)が決まっています。
組み立てや現場への搬入を考慮すると、工事目的物となるコンクリート構造物の大きさによっては、鉄筋の長さが12m以上必要になります。
また、現地で鉄筋を組み立てることを考慮すると、施工の都合上接合する部分が発生します。
例
20mの梁を造る場合
8m+8m+4m
※ラップ長やかぶりは考慮していません
現場で鉄筋を組み立てるさいには、鉄筋同士を接合させる継手が必要不可欠です。
次に重ね継手の必要長さについて詳しく解説していきます。
重ね継手の必要長さ(ラップ長)
重ね継手の長さ(ラップ長)って何が根拠なんですか?
土木の場合は、コンクリート標準仕様書で決まっています。
重ね継手の応力の伝達機構は鉄筋の定着部と似ているため、「重ね合わせ長さ」は基本定着長に基づきます。
定着長さは、コンクリートの設計基準強度に基づく付着強度、鉄筋の強度、鉄筋径(直径)の3つの要素で決定されます。
α:補正係数(1.0~0.6)
fyd:鉄筋の設計引張降伏強度(SD345=200kN/mm2)
Φ:鉄筋径
fbod:コンクリートの設計付着強度
さらに細かい条件があるので、詳しく解説します。
軸方向鉄筋の重ね継手の必要長さ(ラップ長)
一般的には上述の基本定着長ldが適用されますが、重ね継手の場合は条件が2つあります。
- 配置する鉄筋量が計算上必要な鉄筋量の2倍以上
- 同一断面での継手の割合が1/2以下
この2つの条件を満たすことができない場合は、以下の通りです。
- どちらか一方のみ満たされる場合には、基本定着長の1.3倍以上
- 両方が満たされない場合には、基本定着長さの1.7倍以上
強度を確保するために継手長さを長くする必要が生じます。
さらに、どちらの場合でも継手部を横方向鉄筋で補強する必要があります。
横方向鉄筋の重ね継手の長さ(ラップ長)
横方向鉄筋の継手は鉄筋を直接接合する継手を用いることとし、原則として重ね継手を用いてはならないとされています。
横方向鉄筋の継手は、鉄筋を直接接合する継手を用いることとし、原則として重ね継手を用いてはならない。
土木学会コンクリート委員会コンクリート標準示方書改定小委員会 2017年『コンクリート標準示方書(設計編)』土木学会(P369)
スターラップに沿ってひび割れが発生することがあるため、スターラップの継手は鉄筋とコンクリートの付着を期待する重ね継手を用いるのは好ましくありません。
重ね継手以外の施工方法や注意点
重ね継手についてのラップ長の計算方法等は理解できました
最後に重ね継手の注意点や他の継手方法についても理解を深めましょう
先ほどまでの重ね継手の解説に加えて、最後に重ね継手以外の継手方法や重ね継手を行う場合の注意点について解説します。
知っているか知らないかという世の中で、数分で理解できる内容なので、サクッと学んであなたの技術力を上げてください。
いも継手はダメ
鉄筋の接手は構造物の弱点とならないようにするために、
- 一断面に集中させない
- 応力が大きい位置では鉄筋の継手を設けないことが望ましい
鉄筋の継手は千鳥に配置するのが基本です。
重ね継手には関わらず、鉄筋の継手の位置は鉄筋径の25倍以上ズラす必要があります。
鉄筋は構造物に働く引張応力を受け持つ大切な部材のため、継手を一カ所に集中させる「いも継手」は避けるべきとされています。
なお、鉄筋の継手で避けるべき「いも継手」については[『いも継手』とは!?鉄筋の重ね継手の基準について元ゼネコンマンが徹底解説]で詳しく解説しています。
異径の重ね継手の場合
断面の検討を行い鉄筋量を減ずることが可能であることが確認できれば、径を細くすることができます。
無駄に太い鉄筋を使っては不経済な設計になってしまいます
重ね継手は鉄筋径が異なる鉄筋同士でも施工を行うことができるので、異径の重ね継手という設計になる場合があります。
なお、異径の重ね継手の場合ラップ長は短い方の鉄筋を基準に計算します。
詳しい理由については[【異径の重ね継手】なぜ細い方の鉄筋径がラップ長の基準なのか?]で詳しく解説しています。
✅異径の重ね継手の注意点を解説
関連記事 【異径の重ね継手】なぜ細い方の鉄筋径がラップ長の基準なのか?
継手の選定方法
鉄筋の継手は大きく分けて3種類です。
どのように継手の種類が決まっているのかというと、(独)土木研究所の論文を下に『コンクリート橋示方書』で以下のように根拠が記載されています。
一般的な施工条件における鉄筋の継手の種類
~D16 | D19~D25 | D29~D35 | D38~D51 | |
---|---|---|---|---|
重ね継手 | ◎ | ◎ | ||
ガス圧接継手 | ○ | ◎ | 〇 | |
機械式継手 | ○ | ◎ | ◎ |
D29以上の鉄筋には、重ね継手を用いないのが一般的です。
実際、太径の鉄筋は過密になるので、コンクリート打設時に充填されにくくなります
また、建築でも同様に鉄筋の継手に選定について仕様書で定められています。
『建築工事標準仕様書JASS5鉄筋コンクリート工事2003年(日本建築学会)では、D35を超える場合の異径鉄筋の重ね継手には原則として用いないこととします。
重ね継手について【まとめ】
コンクリート構造物には必要不可欠な鉄筋の重ね継手について解説しました。
基本的には図面に謳ってある数字以上の継手長さを確保すれば現場の管理としては問題ありません。
しかし、技術者としてどのように継手の長さが決まっているか知っておいて理解している必要があります。
鉄筋の長さや施工性を考えると鉄筋には継手が必要
重ね継手に必要な長さ(ラップ長)は、コンクリートの付着強度、鉄筋の降伏強度、鉄筋径で決る
重ね継手の位置は原則として、25倍以上ズラす
以上、鉄筋の重ね継手について解説しました。
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